FORESIGHT RESEARCHAIの新しい物差し|全5講
SPECIAL RESEARCH SERIES · 第2講 / 5

私は1年間、プロンプトを一度も書いていない。

FORESIGHT RESEARCHAIに仕事を任せる

プロンプトを自分で書かない、というAI活用の実践

私は日常的にAIを使っている。研究を進め、企画を考え、Webサイトを運営し、複数のAIに仕事を分担させる。ところが、この1年ほど、自分の手で「完成されたプロンプト」を書いた記憶がない。代わりに頻繁に口にする言葉がある。「プロンプト出してー」。一日に何度も、AIに別のAIへ渡す指示文を考えてもらっている。

初めて聞く人は、手抜きだと思うかもしれない。しかし、私にとっては自然な分業だ。AIに向けて書く文章なら、AIに考えてもらえばいい。人間が友人へ送る手紙には、自分の言葉で伝える意味がある。一方、AIへの業務指示では、文章の書き手が誰かより、仕事が正しく進むかどうかが重要だ。必要ならAIに下書きさせ、別のAIに穴を探させ、実際の結果を見て直せばいい。

たとえば「自社サイトに研究記事を5本追加したい」と考えたとする。私が最初に伝えるのは、読者、記事の狙い、守るべき制約、完成の条件だ。そこからAIに、編集者用の指示、調査担当用の指示、実装担当用の指示を作ってもらう。途中で曖昧な点があれば質問させる。書かれた指示が見事でも、公開ページが壊れたり、引用が間違っていたりしたら失敗。評価するのは指示文の芸術性ではない。

プロンプトを手書きしない仕事の流れ

① 目的を伝える

何を実現したいか、背景や制約を説明する

② AIと設計する

AIに手順や必要な指示文を考えさせる

③ 結果を確かめる

成果を確認し、足りなければ修正する

FORESIGHT RESEARCH 編集図解|本文の要点を整理

これは、そろばんと電卓の関係に少し似ている。そろばんを極める価値はある。しかし、計算結果が必要なすべての人に、そろばんの熟練を求める必要はない。道具の進化によって、人間が直接担う作業の範囲は変わる。プロンプトも同じだ。書き方を知ることは役に立つが、手書きが唯一の正道ではない。

もちろん「AIに任せれば全部うまくいく」とも思っていない。AIが作った指示文は間違うし、必要な条件を落とすこともある。だから私が手放さないのは、目的を決めること、優先順位を選ぶこと、危険な実行を止めること、完成した仕事を確認することだ。指示文を書く時間を節約しても、判断する責任まで放棄するわけではない。

もちろん、私のやり方が誰にとっても最適だとは言わない。初心者なら、短い指示を自分で書く経験が理解を助けることもある。専門的なシステムを構築する人には、細かな指示設計の知識が必要だろう。それでも、日常の仕事で成果を出したい人に、まず難しい型の暗記を勧めるべきか。私はそこに疑問を持っている。

では、手書きプロンプトの腕前以外に、AI活用の実力を測る方法はあるのだろうか。次は、AI時代に必要な「新しい物差し」を考える。

※教育サービスの価値を一律に否定する記事ではありません。主張と検証可能な成果を区別しています。