2026年になっても、「生成AIを使いこなすにはプロンプトエンジニアリングが必要」という言葉を目にする。実際、CTC教育サービスの研修案内には、プロンプトエンジニアリングの理解が「欠かせません」とある。1日66,000円の講座だ。また、日本プロンプトエンジニアリング協会は、AI活用の専門スキルを証明するPEP検定を提供している。受験料は11,000円。こうした市場が現実に存在することは、公式ページで確認できる。
ここで最初に断っておきたい。これらの講座や資格が無価値だと言いたいのではない。実際の講義には論理的思考、リスク管理、AIエージェントなど、プロンプトの作文以外にも学ぶ内容がある。受講料に見合うかどうかも、目的や受講者によって異なる。問題はもっと手前にある。「プロンプトを書く技能」と「AIを使いこなす能力」は、本当に同じなのだろうか。
少し考えてほしい。あなたが会社の資料を作りたいとする。最初に学ぶべきことは、AIに与える文章の美しい型だろうか。それとも、誰に何を伝え、読み終えた相手にどう動いてほしいのかという、資料の目的だろうか。目的が曖昧なら、どれほど立派な指示文でも、立派に的外れな資料が出来上がる。反対に目的が明確なら、AIと会話しながら構成や指示文を一緒に作ることができる。
学ぶ前に確認したい3つのこと
指示文の書き方だけでなく、目的設定・検証方法も扱うか
受講後に何を完成させ、どう評価できるか
無料で試せる方法と有料研修の付加価値を比較する
さらに見落とされがちな事実がある。AI開発企業自身が、プロンプトをAIに生成させる機能を提供しているのだ。つまり「良い指示文を人間が最初から書けること」は、少なくともすべての利用者に必須とは限らない。ここを説明せずに、難しい書き方だけを上達の近道として売るなら、学習者は自分に必要な技能を見誤るかもしれない。
もう一つ、価格を見るときに忘れたくないことがある。研修費用は「講師の説明時間」だけで判断できない。受講後の実務支援、教材の更新、企業内での共通知識づくりにも価値がある。一方で、無料のAIツールに一度質問すれば解決する作業まで、高額な必修技能として扱われていないかは確かめたい。買う前に、無料で試す。この順番を逆にしないことだ。
講座を検討する人には、三つだけ質問してみてほしい。AIに指示文を作らせる方法も教えてくれるか。学習後に何を完成させられるか。成果の良し悪しをどう検証するか。答えが明確なら、その教育には意味があるだろう。答えが「とにかく上手なプロンプトを書けるようになる」だけなら、もう一度考える価値がある。
では、プロンプトを自分で書かない人は、実際にはどのようにAIを使っているのか。次の講義では、少し変わった一人の実践例を紹介しよう。
